どんな想いも、必ず私は胸に刻むから。

 駅へ向かう帰り道、ビルの隙間に白い猫が顔を出していた。真っ白な毛が綺麗な野良猫(だと思う)。手を差し出そうとするがさすがに都会猫は警戒心が強く、ざっと後ずさる。なにも食べ物も持っていなくあきらめて駅へ向かおうとしたら反対にも白い生物がいた。猫だ。さっきの猫とどうやら兄弟(姉妹)のようだ。この白猫も暗い道でもよく分かる程綺麗な毛なみでうりふたつだった。もしかしたら双子なのかもしれない。よく黒猫は不吉だというが、白猫、しかも二匹も見かけると、幸せを運んでくれるような気がした。
 その代わりに僕は、この双子の猫の幸せを祈って家路に向かった。白い二つの残像が頭にいつまでも残っていた。